ASD(自閉症スペクトラム障害、アスペルガー症候群)のパートナーを持った方の悩みなものの一つが「気持ちをわかってくれない」ということではないでしょうか。
今回は、なぜ共感してくれないのかを色々なパターンに分けて考えたいと思います。
ちょっと複雑な話ですが、パターンに当てはめることで相手への対応策について考えやすくなりますよ!
実は何が起こっているかくらいはわかってたりもする
これに関しては色々な専門家の方が研究されていて、論文もごまんとあるのですが私なりに噛み砕いて言うと、
- ASDだからといって、全く共感できないわけではない
- むしろ定型発達者(いわゆる普通の人)と同じくらい共感はできているパターンが多い
- しかし、そこから一歩踏み込んで「だから~してあげる」が無い
- もちろん全く共感できない人も中にはいる
ということです。
全く共感できない人の場合に、たまに世間を騒がせる残虐な殺害事件のようなことが起こるんだろうな、と見ています。
相手のパターンを見極めよう
我々は「~してあげる」「そうだよね」と相槌を打つといった実際の行動までを共感と呼んでいるので多少ややこしいところがありますが、問題を切り分けて、まずは「状態を理解しているか」から確認してみましょう。
- 例えば、あなたは急ぎの用事があって公園を横切ろうとしています。
- 視界の隅で誰かが公園のベンチに座ろうとしています。
- あなたはそのベンチに「ペンキ塗りたて」と書いてある札を見つけてしまいます。
- 「あっ危ない!!」と声をかけようと思うか思わないか、あなたならどうでしょうか?
- 次に、あなたが現実で困っている相手ならどうするか考えてみてください。
- もし「相手なら声をかけない」と思うなら、相手の気持ちになって原因を考えてみましょう。
レベル0:「ペンキ塗りたてのベンチに座るとスボンが大変なことになるとか、考えたこともなかったわww」
レベル1:「だって声をかけてもお礼がもらえるわけじゃないだろうし」
レベル2:「あの人が着ていたのがジャージだったから別にいいと思ったんだ(ドンッ)」
レベル3:「あのとき誰も周りにいなかったし、急いでたからまあいいかなあと思って、、、」
さて人間が上の例のような状況に陥ったとき声を掛けるかかけないか、いうなれば介入・非介入の判断には4つの発達段階があると言われています(Eisenberg Berg, 1979)。
上のレベル0~3をこの4つの発達段階に合わせて対策を考えていきましょう。
レベル0:認識する力が不足している
これは発達段階の前段階となります。
そもそも「ソレがどういうことかわかっていない」ということです。
「風邪でしんどいのに、全然家事を手伝ってくれない夫」は割とこの部類だと思っています。
つまり「風邪をひくとしんどい」程度は本人もわかっているのですが、しんどい→家事をするのが大変→だから今日は〇〇の家事を変わってあげようがない、ということです。
解決策
この段階の人達には「わかりやすく今の自分の状態を伝える」しか無いと思っています。
例えば「風邪でしんどいくて家事を手伝ってほしい」という状況なら
「今熱が○℃で動いたら頭がくらくらするから今動いたらお皿割ってしまうかも、疲れている所悪いけどお皿洗ってくれないかな」
とお願いするのです。
がしかし、この場合相手も皿洗いをしたくないでしょうから
「いいよ寝ときな、皿洗いは明日治ってからやったらいいから」
などと言って煙に巻こうとすることも多いかもしれませんね。
でも、とりあえずはレベル0卒業、ここからはレベル1の話なのです。
とはいえ他の事柄になると(下手すると同じ内容でも次は再び)レベル1からのスタートになるので注意しましょう。
レベル1:報酬が無いと動きません
ここからはEisenberg Bergさんの発達段階の話になります。
ざっくりいうと、「状況はわかるけど助ける必要性を感じない」とか言っちゃう人たちの分類になります。
まずレベル1について、これは発達段階の第一段階に相当し「助けることによってお礼をもらえるかもしれないから」「次に助けてもらえるから」といった報酬ありきな打算により動くかどうかを決める段階です。
快楽主義的な推論と言ったりもします。
解決策
この段階の人の場合、すごくわかりやすくモノで釣るのが最適解となります。
「~してくれたらマッサージしてあげる」
「~してくれたら欲しがってたアレ、買ってあげる」
といったものです。
「~してくれたら○円あげる」で家事を手伝う小学生のようですね。
がしかし、例のような風邪の場合ではモノで釣るのもちょっとシャクですよね。
こんなときは相手の弱みを握りましょう。
これでピンときた方はそれでいいのですが、とはいえそんなに大きな弱みを握る必要はありません。
例えば相手が風邪を引いた時、まずはちゃんと看病してあげるのです。
そして「私が前辛かったとき、こうしてくれたら嬉しかったのになあ。今度はお願いね」
と言っておくのです。相手は頷くしかありません。
そして今度あなたが床に伏したとき、相手が何もしれくれなかったら
「もう逆の立場のとき何もしないよ!」というのです。
これでも十分報酬になります、自分が困った時に助けてくれることが確約されるわけですから。
レベル2:自分なら〇〇→相手も〇〇のはず
発達段階の第二段階に相当し、ここは「自分がそんな状況になったら困るだろうから助けてあげたい」「自分ならきっと悲しいから慰めてあげよう」と、「自分なら~してほしいからする」という域です。
共感のベースになり得る段階ですね。
この域にいる幼児は、例えばお友達が泣いているとしたら自分の親を連れてきてしまったりします。
自分なら自分の親が来てくれたらリラックスできる、というのがあるのでしょうね。
解決策
「あなたが~のとき、助けてくれる人が現れたらめちゃくちゃありがたくない?」
「~してくれると、私は嬉しいな」
と、日頃からとにかく「あなただったらどうか」や「私だったらどうか」というのを刷り込むのです。
上のペンキの例でいくなら「あなたはジャージならいいと思っていても、その人にとってはとっては大事なジャージだったかも。そもそもペンキがつくことそのものが嫌な人が大半よ」と言うということです。
即効性はありませんが、発達障害の方でも必ずいつかは成長します。
その日を信じて言い続けましょう。
ちなみに、我が家のぴぴちゃんは基本的にレベル1で事柄によってレベル0であったりレベル2であったりします。
ということで、実際私は日々根気強くこれらの解決策を回しているカタチです。
レベル3:他人の目あるならがんばれます
発達段階の第三段階に相当し、「これをしたら〇〇さんのなかで印象がよくなるかも」「周りの人にいいカッコがしたいから〇〇する」といった「他人からどう見られてるか」を行動モチベーションにする段階です。
解決策
普段から褒めておきましょう、それも他人を絡めて。
例えば家事ネタでいくなら「今日〇〇さんにあなたが家事手伝ってくれたことめっちゃ自慢したら『いい旦那さんですごい』だって!」
と言った具合です。
伸ばしたい方向に褒めましょう。
すると、本人としては周りが気になってきて俄然自覚を持ち始めます。
ダメなのは「〇〇さんの旦那さん、めちゃくちゃ家事手伝ってくれるんだってー」などと愚痴ってしまうこと。
最悪心を閉ざされてしまいます。
相手を知って、適切な対策を!
最後に発達段階の第四段階についてお話します。
私の作ったレベルで言うならレベル4です。
これは「助けないとどうしても気になっちゃって自分を責めたくなるから今ここで助ける」「だって社会はそうあってほしいじゃん、だから今俺が動く」といった抽象的な理由で動けてしまう段階です。
私が今ぴぴちゃんと一緒に暮らしているのもこういう理由な気もしないでもないですが、世界中の人が第四段階、レベル4でいてくれたら、どれだけ素晴らしいことでしょうか。
そんな日が来ることを願ってやみません。
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